ゆめカフェができるまで           

今度はおぬしが夢を叶える番じゃ

夢見ヶ崎動物公園絵本プロジェクトvol.4     ~「ママアーティスト」を起用する~

 絵本企画を提案してくれたイラストレーターのKちゃん、じつは、絵描きとはまったく異なる本職があります。ここでは詳しく触れませんが、“スポーツジムに行く必要がないほど、滝のような汗をかく力仕事”だそうです。

  Kちゃんと知り合ったのは今から3年前。娘が同じ保育園に入園したのがきっかけです。私の娘Nちゃんと、彼女の娘Uちゃんは、当時ともに0歳。同じ年齢とは思えないほど、体のサイズが違いました。クラスで一番小さいうちの娘は、クラスで一番体格がいいUちゃんに、洋服のおさがりをいただくようになりました。

  その服というのが、かなりインパクト大なんです。最初にいただいたのは……、忘れもしません。大きなバラ柄のスパッツに、ユニコーンのプリントが入った目が覚めるように鮮やかなパープルのTシャツ。

 ベージュやモノトーンといった地味系が好みの私は、思わず目が点になりました。「お、おもしろい……」。それ以来、ちょくちょく話すようになり、すっかり仲良しになりました。

  ある日、保育園の帰り道、ふと「絵本を100冊以上持っている」と言うKちゃん。えぇ、どうしてそんなに? 興味を持って聞いてみると、本人いわく「絵本マニア」だそうで、足しげく本屋に寄っては、ちょっと気に入った絵本を見つけると、つい買ってしまうのだとか。 高校や専門学校で、美術系の学科を専攻していて、絵本作家になるのが夢だったそうです。

 「でも、結婚してからは、育児と家事と仕事でそれどころじゃなくて、もう10年以上、絵なんて描いていないけどね」。

 「ふーん、そうなんだ。じゃあ、今から絵本を描いてみたら?」

 こうして、まさ出版第一号のママイラストレーターが誕生したのです。そう、彼女の絵をまだ見たことがないのに、スカウトしました。

 私にとって一番興味があるのは、「心からワクワクしているか」。心からワクワクすること=天職。それを生かすことが、自然だと思えるのです。Kちゃんは、絵本の話をするとき、子どもみたいに声が弾んでいます。本当に好きなんだなと伝わってきました。

 作品を見ないでスカウトするなんて、考えてみたら無謀なことですが、「ワクワクすること」。これが後に、スタッフを採用する際の方針になりました。

 夢見ヶ崎動物公園絵本プロジェクトでは、Kちゃんのようなママアーティストを起用しています。当初はプロの作家さんに発注することも考えましたが、埋もれている才能を発掘したいと考えたからです。

 イラストだけではなく、デザイナー、フォトグラファー、朗読キャスター、イベントディレクターなど、ママアーティストがそれぞれの特技を生かして関わってくれています。私ひとりは微力でも、たくさん人が集まると、莫大なパワーになることを実感しています。

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《ちょっと裏話》

「ところで、まさちゃんは私がどんな絵を描くか知らないよね」とKちゃん。ああそうだった。そういえば見たことないね、何か描いたものはないの? Kちゃんが、絵と言えるようなものじゃないけど……と言って見せてくれたのが、保育園に提出する日誌。3センチ四方くらいの小さな枠に、娘のUちゃんの日常を描写したイラストが並んでいます。えぇぇ!めちゃうまいじゃん。ささっと走り書きした絵なのに、プロと言っても分からないほどの出来栄え。どこにそんな才能隠してたのよ。これは世のために生かさないともったいない。誰も発掘していない宝の山を見つけたような、そんな予感がしていました。