ゆめカフェができるまで           

今度はおぬしが夢を叶える番じゃ

夢見ヶ崎動物公園絵本プロジェクトvol.2     ~土地にまつわる「物語」を伝えたい~

 なぜ、武蔵小杉の公園の話にピンときたのか? それは、「物語」というキーワードに、これだ!という直観を感じたから。

  「保育園児がお散歩している脇で、バシャバシャ必死に写真撮ってたからさ、あやしいおばさんって目で見られちゃった、わはは」と豪快に笑うイラストレーターのKちゃん。ストーリーが描かれた看板と公園の写真をたくさん送ってくれました。

  写真を見てみると、歩いて数分で通り抜けられるほどの、本当に小さな公園でした。公園というよりむしろ、最近よく見かける高層マンション敷地の小ぎれいに整えられた空き地。こんなありふれた風景も、物語の舞台になることで、一本の木、小道、水辺が、ちょっと特別な場所に見えてくるから不思議です。

 

 「幸区の魅力を発信するパンフレットを作る」というオファーがきたとき、まず考えたのは、インターネットの情報があふれている今、紙媒体で伝えたいことは何かということでした。お店もイベントも、知りたいことはスマホであっという間に検索できる。最先端の技術を駆使した刺激的な遊び場もいっぱい。

 ここにしかない魅力を発信するには、土地にまつわる物語を創り、親子で楽しめる絵本にしてはどうか。いつも見慣れた風景が、心ワクワクする場所になるのではないだろうか。そんなふうに考えたのです。

 

 島根県出身の恩師Uさんから、こんな話を聞きました。日本神話に登場する「ヤマタノオロチ」は、毎年氾濫を起こす島根の暴れ川をモチーフにしたもので、川全体の形状は、八つ首の大蛇そのもの。上流には日本刀の材料である砂鉄の産地があり、神話のストーリーに、ヤマタノオロチの尾からツルギが出てきたという場面があります。

  大古の昔から、その土地をテーマにした物語が創られてきたんですね。ヤマタノオロチのように、幸区の地形や産物、特徴を生かした物語が生まれると素敵だな……。さらにイメージが広がっていきました。

**************************************《ちょっと裏話》

 我が家の近所にある多摩川。見晴らしが抜群にいい河川沿いのサイクリングロードは、私のお気に入りの場所。二子玉川までのんびりサイクリングをすると、落ち込んだ気分もすっきりします。

 この多摩川も、じつは、島根の川と同様に「暴れ川」として昔から知られていたのだそう。幾度も洪水被害を引き起こす一方、このあたりの地域は、大きな恩恵を受けて発展してきました。

 川遊びや水浴場として市民に愛されていましたが、高度成長期の1960年代~70年代前半は、一気に川が汚れてしまいます。その後、下水道の整備や環境改善の取組みを行った結果、今ではアユが生息できるほど水質が回復しました。

 そういえば、有名な昔話「雪女」の舞台は、雪深い地方かと思ったら、なんと多摩川なんだよ、知らなかったでしょうとKちゃんが得意げに教えてくれたっけ。多摩川、なかなか奥深い魅力がありそうです。

 

(参考)NPO法人多摩川エコミュージアム 松井隆一さん