夢見ヶ崎動物公園絵本プロジェクトvol.10 ~「採択決定」絵本企画が消滅!?~
プレゼンの数日後。
2018年3月中旬、はたらくらすのNちゃんから電話がかかってきました。いつもはずむような声なのに、この日は少しトーンが低め。「区役所から連絡があって、一応企画は通ったんですけど……。
〈絵本か新聞、どちらか1つ〉という条件つきの採択になったそうです」。「昨日メール見たよ。ちょっと驚いたけどね。かえってありがたいことじゃないかな。始めから2つの企画を動かすのは負担が大きいし、ひとつに絞ったほうが、じっくり集中して取り組めるよ」。
正直、企画が「通るか」「落ちるか」の二択しか頭になかったので、「企画の一部のみ採択」という結果は、想定外でした。でもよく考えてみると、企画をひとつに絞ることでメリットもあります。
このプロジェクトを立ち上げた当初は、3年構想のプランを考えていました。1年目は、絵本や新聞といったツール制作。2~3年目は、ツールを使ったイベントを開催。区民を巻き込む規模を徐々に大きく育てていく――。企画をひとつに絞れば、2年目以降に予定していた「ツールを使ったイベント」を1年目からスタートできます。
Nちゃんは「そうですね」とうなずいて、言葉をつづけました。「それで、絵本と新聞どっちにするかなんですが。(NPO代表の)Hちゃんとも話したんですけど、新聞のほうがいいねってことになったんです」。内心少し驚きつつも、気持ちは決まっていたので即答しました。「うん、新聞にしよう!」。
じつは、絵本ではなく、新聞のほうがいいという話は、5か月前から相談を受けていました。絵本の制作は初めての試みなので、イメージがわかないのも、無理はありません。なにしろ、提案した本人に、具体的なイメージがないのですから。「絶対大丈夫」と言い切れる自信も、その時点ではありませんでした。
さらに、Vol.5で述べたように、プロジェクトのメインの目的は、ツールを使って街の魅力を体験する=「区民を巻き込む」こと。このビジョンを実行に移すキーパーソンとなるのが、NPOのメンバーです。彼女たちが、「ワクワクするツールを作るのが一番」と考えていました。その気持ちを、Nちゃんに伝えました。
電話の後、大急ぎで新聞一本に絞った企画書を作成。翌日、幸区役所でプロジェクトの方向性を決める会議が開かれました。
そして、なんとまたまた急展開。プレゼンの審査員や区の担当者の意見をふまえて話し合った結果、今回のプロジェクトでは、夢見ヶ崎動物公園の絵本を作ることになりました。
最後にすったもんだがあったおかげで、この事業を率いるリーダーとして、私が果たすべき役割がはっきりと見えました。
「支えてくれるスタッフみんなが、ワクワクするプロジェクトにしよう」。