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今度はおぬしが夢を叶える番じゃ

夢見ヶ崎動物公園絵本プロジェクトvol.19       ~いつもそばにある『まざーまっぷ』~

 2018年6月30日。武蔵小杉駅前のガストで、絵本プロジェクトの会議がありました。集まったのは、はたらくらすのNちゃんと、新しくメンバーに加わることになったJちゃんです。

 この日のテーマは、夢見ヶ崎動物公園マップについて。編集者Iちゃんが、「物語に登場するスポットを紹介する地図を、絵本の巻末に入れてはどうか」と提案してくれました。

 マップは、「絵本を使った街歩きイベント」にも活用する予定なので、地元を熟知している人、幸区で育児をしてきたママに担当してほしいと考えていました。そこで、はたらくらすのメンバーが、育児情報冊子の制作に携わっているJちゃんを紹介してくれたのです。

 打ち合わせ前に、どんなマップにするか考えましたが、具体的なイメージが浮かびませんでした。「物語に登場するスポット」は、白山古墳をはじめ、現存しないところもある。動物園のマップならすでにあるだろうし、A5サイズでは入る情報が限られる。うーん、どうしたものか。

 本題に入る前に、初対面のJちゃんのことをいろいろ聞いてみることにしました。今までどんなことしてきたの? イラストはいつから描いているの? この企画でどんなことをやってみたい? 雑談の中に意外なヒントが転がっていることがよくあるからです。

 大ヒントは、Jちゃんの経歴にありました。「幸区にくる前は、イギリスに住んでいたんですが、向こうに引っ越したときは子供が2歳でした。友達もいなくて、どこに何があるのかまったく分からない状態で。でも、地図があったから、それさえあれば、どこにでも行けたんです」。いつも持ち歩いているうちに、マップはボロボロになっていたのだそう。「それ、それにしよう!」。思わず、頭から絵本のことが吹っ飛びました。大規模マンションの建設ラッシュが続く幸区では、他地域から転入してきた子育て世代が大幅に増えていると、区役所の担当者から聞いていました。慣れない土地で、小さな子供を抱えて途方にくれるママ。私の頭の中で、イギリスに住み始めたころのJちゃん親子の姿に、ぴたりと重なったのです。

「そのイギリスの地図のようなものは、今、幸区にある?」「ええと……一番イメージに近いのは、防災マップかな」「なるほど、他にはない?」「そうですね、幸区の育児情報冊子のマップは、地域によって別のページに分かれているので、全体を一度に見渡すことができないんです。防災マップは、大きいから一目でどこに何があるか分かります」。

「じゃあ、防災マップの〈ママ視点バージョン〉を作ろう。母子にやさしい施設やショップ、友達作りがしたい人が集まる場所、ベビーカーが通りやすいルートを地元の現役ママの目線で入れる。ママが持ち歩きたくなるような、おしゃれなイラスト入りデザイン。完全保存版で、〈いつもそばに置いて〉ボロボロになるまで使えるマップ……。イギリスにいたときに使っていたようなマップって作れるかな」「はい、だいたいのイメージはあります。じつは大判マップを以前から作りたいと思っていたんです。ぜひやってみたいです」。

 隣を振り返ると、Nちゃんが大きくうなずきました。よし、決まった。残る課題は、絵本プロジェクトに、いかに関連づけるか。さらに、装丁の変更や予算など手短に相談し「あとは、区役所に私から説明しておきますね」。いつも広いふところで受け止めてくれるNちゃんに、あらためて感謝。