ゆめカフェができるまで           

今度はおぬしが夢を叶える番じゃ

夢見ヶ崎動物公園絵本プロジェクトvol.7      ~「幸区の歴史」をモチーフにした物語~

 2018年1月上旬、上京してから15年来の友人と、子連れ新年会を開催。この日、朗読コンサートのメンバーに続き、新たな助っ人が仲間入りしました。

  今回のプロジェクトのスタッフは、本を制作した経験がないママアーティストたちです。私は、フリーライターとして雑誌や新聞、広告の原稿を書いていますが、絵本というジャンルは初めてのこと。未知の分野に挑戦するにあたって、テーマや構成、デザイン、本の装丁、予算など、総合的な舵取りをしてくれるプロのアドバイザーが必要と考えていました。

 そこで、新年会に来ていたIちゃんに、相談してみました。2歳の末っ子をはじめ3人の子供の母であるIちゃんは、人気雑誌の副編集長に抜擢された敏腕編集者です。私が出版社を起ち上げたときから、すったもんだ話をいつも笑いながら聞いてくれて、無謀なチャレンジにも「おもしろい」と耳を傾けてくれました。

 でも、Iちゃんは、平日も休日も分刻みの超過密スケジュール。とてもそんな時間はないだろうな。ダメもとで切り出したところ、「いいですよー」とあっさりOK。

あ、ギャラはいらないですよ。勉強代だと思っています、後学のための――。IちゃんもMさんも、本当にありがとう。あたたかい気持ちと言葉に、思わず涙がこぼれました。

 

 それから、Iちゃんのアドバイスのおかげで、とんとん拍子にいろいろな方針が定まっていきました。ひとつはストーリーについて。

 絵本を制作するにあたって、まず思い浮かべたのが、ニューヨークの動物園を舞台にしたテレビアニメ『ペンギンズ』。個性豊かな動物たちが繰り広げるコメディータッチのファンタジー。娘も私も大好きで、何度も繰り返し見ている番組です。このストーリーのように、夢見ヶ崎動物公園の動物たちを主役に、園内で起こる出来事を描いた物語にしようと考えていました。

 ところが、公園のことを調べていたある日、興味深い事実を知りました。それは、動物園がある加瀬山に、古墳があるということ。区役所の担当者に聞いてみると、「ああ、古墳ならたくさんありますよ。10基以上かな。動物園のトイレの横の、あの小さな山は古墳だし、その隣にも、その先の広場のところにも。あれが古墳だって知らない人も多いんですけどね」「古墳の上に動物園!?」。かなり衝撃を受けました。

 この地には、はるかかなたの歴史と現代が同居している。私には、現代の夢見ヶ崎動物公園に集う親子と、はるか1700年前の豪族の親子の姿が重なって見えたのです。この事実を知ったとき、きりがかかってぼんやりしていた視界が、突然ぱあっと開けたような、そんな感覚がありました。

 この地に埋もれている歴史を掘り起こして、物語にすることはできないだろうか。そこで、Iちゃんに相談すると、すぐにメールが来ました。

 「『ちいさなおうち』※(下記参照)のように、この場所が形を変えながら、地域を見守り支えてきた、ということが伝わるといいですね」。

 なるほど。加瀬山を中心とした幸区の移り変わりをモチーフにした物語か。いいな、よし決まった。

 友人であり、長年の仕事仲間でもある、Iちゃんのメールには、こんなメッセージが添えられていました。

「Yさん(←私)には、人の思いとか、気持ちとか、歴史とか、そういうものの仕事が、いちばん似合う気がします」。

 

※『ちいさいおうち』

アメリカ合衆国の絵本作家、バージニア・リー・バートンの代表作。静かな田舎町にちいさいおうちがたっていました。やがて道路ができ、高い建物がたち、周囲がにぎやかになっていく‥‥というストーリー。