夢見ヶ崎動物公園絵本プロジェクトColumn 「100冊35000円」の絵本出版
「ところで、予算はいかほどでしょうか……?」
絵本をつくることを提案したとき、役所の方がちょっと心配そうに尋ねました。
絵本を制作するには、高額の費用が必要というイメージがあるからです。
ちなみに、絵本の製本費用をネットなどで調べると、少部数の場合、一冊数千円。
あくまで製本のみですから、これに制作費も加算されます。
私も初めてそれを知ったときは、なぜ本屋さんで売られている絵本が1000円程度なのか不思議に思いました。
大手出版社では、印刷する冊数が多いため、一冊当たりの単価が低く抑えられるのです。
でも、役所で作る部数は、200~300部程度。
プロジェクトの予算が限られているため、難しいと思われたのでしょう。
「このくらいでできます」と提示すると、キョトンと驚いた表情をされました。
理由は簡単。
本屋さんで売られているような、ハードカバーの立派な装丁ではなく、
A4パンフレットの真ん中をホッチキスでパチンと留めただけのものだからです。
全26ページの絵本の場合、両面カラーでA47枚。
インターネットで注文する格安印刷なら、100部35000円ほどで印刷できるところもあります。
私も、絵本といえば、本屋さんに売られているような立派な装丁で。
という固定観念がありました。
でも、2年前の経験が、その考えを覆したのです。
まさ出版をたちあげたばかりのころ、数冊の自費出版を請け負いました。
その中のひとつに、絵本がありました。
予算が少なく、一般的な印刷では無理。
ならば、原版をコピーして、製本してみようと思いつきました。
近所のコピー専門店に行き、
何度も何度も、試行錯誤を繰り返して、
やっと、絵本っぽく仕上がりました。
あのとき、いっしょに格闘してくれて、
退屈した娘の相手をしてくれた
コピー店の店員さん、本当にありがとうございます。
けっきょく、条件面が折り合わず、出版の話はなくなりましたが、
私の手元にあった、その「コピー絵本」を、ほしいという方が数人あらわれました。
作家さんに連絡をしたところ、渡してほしいとのことだったので、おゆずりしました。
そして後日、「とてもよかった」と言っていただいたのです。
この一件を通して、分かったことがあります。
大切なのは、装丁ではなく、内容だということです。
装丁はコピーでも、メッセージは読み手に十分に伝わるのです。
だから、今回のプロジェクトでも
自信をもって、「コピー絵本」を提案しました。
装丁はけっして立派ではありませんが、
内容は一年かけて丁寧に創り上げました。
たくさんの親子に読み聞かせをしていただければ
作者としてこんなうれしいことはありません。