ゆめカフェができるまで           

今度はおぬしが夢を叶える番じゃ

『ゆめみがさきのふしぎにゃトンネル』誕生秘話vol.1~作者まさが絵本プロジェクトに参加することになったきっかけ~

原画展前4日。
一週間前からまったく原稿が進んでなーい。
あれもこれも、たくさん書かなければと思うと
頭がごちゃごちゃになって、一文字も進まない。
いよいよ追い詰められた。

まずいなーどうしよう、という思いを抱えたまま
等々力公園まで、ぼーっと自転車をこいでいると、
イメージが浮かんだ。

「ひとつだけでいい」

そうだ。15の原稿を書かなくてはと思い詰めていたけれど、原画展を見に来た方の心に、ひとつだけでも残る文があればそれでいい。

そこで、もうひとつ、イメージがわいた。

「自分のために書いて」

イカさんというボイスセラピストの方から言われた言葉だ。
誰のためでもない、今の自分のために書きたい文章を、ひとつだけ書こう。
昨日、9月15日(日)の新聞に出ていた記事
障がい者スポーツマンガシリーズ~水泳~」
を見て思い出した。
絵本プロジェクトに参加したころの気持ち。
いま原点を思い出したい。
また、書かなくちゃ、書かなくちゃという思いにとらわれている自分に向けて、原点を確認する文章を書きたい。

こうして今日、ひとつの文章を書いた。

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『ゆめみがさきのふしぎにゃトンネル』誕生秘話vol.1

~作者M絵本プロジェクトに参加する、の巻~

 

2016年8月。フリーライターのわたしMは、ある朝、文章が書けなくなった。何の前触れもなく、突然に。最初は自分の状況がよく分からなかった。明日になったら、1日休めば、もとに戻るだろうーー。

ところが、次の日も、その次の日も、何度繰り返しても同じ。パソコンを開こうとすると、涙が出る。自分から〈書くこと〉をとったら、何も残らない。20年間、そう信じてきた。他にできることなどまったく思いつかず、七転八倒を繰り返すこと1年あまり。八方ふさがりの真っ暗なトンネルに、一筋の光がさす転機が訪れた。

たまたま参加した障がい者スポーツ講習会で目にした、水泳世界大会の映像。会場の片隅で、周囲の人がギョッとして振り返るほど、号泣してしまった。

なぜ、こんなにも心に響き、揺さぶられたのか。片腕だけで、懸命に泳ぐ日本人選手の姿が、力強くわたしに語りかけた。

失ったものにしがみつくな。自分に残された機能を最大限に活かせる、オリジナルのスタイルを、編み出せ、磨きあげろ……! 

目からでっかいウロコが落ちた。書くことにこだわるのは、もうやめよう。

選手から受け取った「けっしてあきらめるな」というメッセージを胸に、その日から真剣に、とことん、自分自身と向き合った。「わたしに残された機能」は何か。

何日も何日も、考え抜いて出た結論。それは、編集力を活かすこと。ごちゃ混ぜになった材料の中から、光る1点を見つけ出し、膨らませる。原稿を書く仕事を通して身につけた、1点を嗅ぎ取る直感力。それを、今までとは違う舞台で活かしたい。ちょうどそのとき、目の前にあらわれたのが、幸区のプロジェクトだった。この街は、どういう切り口で見せれば、魅力が伝わるのか。新たな夢探しの旅が始まった。