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今度はおぬしが夢を叶える番じゃ

脚本をつくる~〈わ〉をキーワードにしたミュージカル~

 

2019年10月2日(木)

 

2月1日に予定されている絵本をもとにしたミュージカル。音楽と歌とお芝居を組み合わせたステージをつくる。最初は、劇団に絵本を送って、絵本のストーリーをそのまま劇にしてもらおうと考えていた。

 

プロデューサーIさんに、ミュージカルのことを話したところ、「絵本のストーリーをそのまま劇にするのではなく、歴史の背景を盛り込んだ脚本を作るといい」とアドバイスをいただいた。

 

「きゃ、きゃくほん……!? 誰が書くんですか」
「そりゃあ、まさちゃんが書くに決まってるでしょう。伝えたいことを、セリフにして書けばいいんだよ」

 

ああ思い出した。絵本のときだって、「絵本のストーリーなんて、キャラクター決めて、登場しました、次こうなりました、次こうなりましたって、つなげばいいんですよ」とだれかに言われて、真に受けて、エラいめにあったのだ。

 

どなたか脚本書きたい人いませんか~、と声をかけてみたものの、案の定、手をあげる人はいない。「いいですね!」「おもしろそうですね!」とは、みんな言ってくれるんだけど……。

 

残るは自分しかいない。とりあえず、図書館で「シナリオの書き方」なる本を数冊かりてきた。しかし、模範例をいくつ読んだって、なにひとつ、言葉が浮かばない。

 

伝えたいテーマは決まっている。
「夢をかなえるみんなの〈わ〉」

 

困ったのは、このテーマを、どうやったら脚本に落とし込めるのか。歴史のハナシを、どうやって「夢をかなえるみんなの〈わ〉」につなげる??? 

 

とりあえず書き始めてみたけれど、歴史を順番に追うだけでは、やはり、まったくテーマとかけ離れている。冬の上演に間に合わせるためには、もう時間がない。

もはやお家芸となりましたまさ出版テンパリ劇場、どうにもこうにも展開に行き詰まって、もう一度、Iさんに相談した。

 

「あれ、もう答えが出てるじゃん。自分で、答えを言ってるよ。夢をかなえるみんなの〈わ〉、なんでしょう。
絵本の1見開きごとに、〈わ〉を入れていくんだよ。たとえば、古墳時代だったら、最初は、人がたくさん集められて、どうしてオレたちがこんなことしなきゃいけないんだ、めんどうだなあと言っていたけど、ヤマトタケルが声をかけて、みんなが〈わ〉になって、力を合わせたら大きなお墓が完成した。
工場の時代は利益はたくさんできたけど、〈和〉の心を失って自然との〈調和〉がくずれて、公害が起こった。事実は知らないけど、物語だからね、つくっていいんだよ。
ことさら〈わ〉を強調することはなくて、最後に観客が、ああ〈わ〉がテーマだったんだな、と気がつけばいい。

〈わ〉が大切って、いま世界共通のテーマでしょう。自分のことばっかりでエゴを通そうとするから、〈わ〉がくずれているから、うまくいかない。人と人も、国と国も、人と自然も」

 

なるほど……!! 〈わ〉をキーワードにして、歴史を描けばいいんだ。これで、絵本のストーリーと、伝えたいテーマがつながった。

 

そういえば、思い出した。夢見ヶ崎動物公園は、工場だらけの街に、緑を取り入れようという願いをこめて作られたと聞いた。動物公園ができてから、かつて、いたるところで聞こえていた野鳥のさえずりが戻ってきて、街は自然との〈調和〉を取り戻した--。

「そのエピソードいいじゃない。そのシーンを最後のフィナーレにもってくるといいかもね」

 

ミュージカルを上演するサルサ劇団は、以前のイベントで、手をつないで〈わ〉になって踊るダンスを披露していた。観客を巻き込んだ参加型ミュージカル。

〈わ〉をキーワードにしたミュージカル。

目の前の視界が、少しずつ広がってきた。