ゆめカフェができるまで           

今度はおぬしが夢を叶える番じゃ

ネットショップは自分ひとりで完結できる       前田めぐる(コピーライター)

『前田さん、主婦の私もフリーランスになれますか?』

前田めぐる著(日本経済新聞出版社

 2人の子どもを育てながら、約30年間にわたって、コピーライター・プランナーとして働いてきた前田めぐるさん。働く母の環境が今よりずっと厳しかった時代、どのように仕事を続けてきたのか。新聞広告を見て興味を持ち、取り寄せました。

 働く母にとって、もっとも大きなハードルのひとつは、やはり「子供が病気になったとき」でしょう。私の関心事も、まさにこの一点。本書には前田さん自身の体験と、どう乗り越えたかが詳しく綴られていました。

 前田さんは、お子さんが1歳のときに耳の病気になり、医師に「保育園を休んで毎日通院するように」と言われたそうです。病気はなかなか治らず、3歳まで通院生活。打ち合わせは?執筆は?診断を受けたときは目の前が真っ暗になったそうです。

 こんな時、睡眠時間を削ってでも時間を確保して「これまでと同じように働かなくては」と考えますよね。ところが前田さん、ここである決断をします。「これは、どうあがいても、今までと同じようには働けないってことだな」と腹をくくり、今いる場所でできることをやっていこうと、すばやく頭を切り替えたのです。

 まず「日時が動かせない取材の仕事」「打ち合わせの多い広告の仕事」「納期のさしせまった仕事」は受けられないことを、周囲に表明。すごいなと思ったのは、彼女がキャリアを重ねてきたライターの仕事にこだわらなかったこと。「仕事が細くなっても、とにかく続けることを考えよう」と模索した結果、たどりついたのが、なんとまったく畑違いの「ネットショップ」でした。

 ネットショップなら、初期投資が少ないうえ、商材さえあれば、受注から発送まで「自分ひとりで完結できる」。ひとりで仕事ができれば、通院もできるし、子供の発熱のたびに、取材に行けるか、原稿の納期に間に合うか、打ち合わせの日程を変更しなくてはと、ハラハラすることはありません。商材は、知人の紹介で出会った韓国製ウェディングドレスにしました。

 前田さんは、病院通いが続いた期間、ネットショップや時間的制約のないコンサルティングの仕事を中心にマイペースで仕事を続け、娘さんが完治してからライティングの仕事に復帰。同じ働き方にこだわっていたら、疲労困憊して途中で折れていたかもしれません。

 じつは私も数か月前、娘の通院で1ヶ月ほど、保育園をお休みしたことがあります。流行性角結膜炎が長引き、3週間たってやっと通園許可をいただいた翌日に、今度は風邪で発熱。ちょうど仕事が立て込んでいる時期で、心身共に消耗しました。

 夫はスケジュールの調整が難しい仕事ですし、両親は九州在住で、簡単に頼める距離ではありません。ワラにもすがる思いで病児保育所に行っても流行性角結膜炎はあずかり不可、近所の友人は「まかせて」と言ってくれましたが、もしもうつったら……と思うと、やっぱり遠慮しました。

 けっきょく撮影の仕事の日、たまたま病気で学校を休んでいた息子に、3歳の娘の世話をお願いして出かけるしかありませんでした。携帯電話と友人の電話番号のメモを息子の手に握らせて。

 「もう無理かも」と追い詰められているときに手にとったのが、この本です。まさに目からウロコ。今までの仕事にしがみつかず、ライフステージに合わせて柔軟に働き方を変える。働きやすい環境がなければ自分でつくる。前田さんの働き方から、仕事を長く続けるうえで大切なことを教わりました。