ゆめカフェができるまで           

今度はおぬしが夢を叶える番じゃ

【19日目】ソーダで夕焼けのようなグラデーションをつくる方法


2019年8月7日(水)

夕方、塾から帰ってきた2号が、また動物のテレビ番組を見ている。
「ほんとに動物が好きねえ。
一番好きなのはネコなんでしょう?」

「ううん、違うよ。
いろいろ好きな動物はいるけど、
一番好きなのは、ホワイトタイガーだよ」

実際に目の前で見たことはないらしいが、
以前、なにかのテレビ番組で見て、
その美しくしなやかな姿に惚れ込んだらしい。

2番目は……
と少し考え込むように首をかしげたあと、
2号の口から出てきた“動物”に驚いた。

「ああ、2番目は、カラスだよ」
「え、あのカラス? え、どこが好きなの?」
「あのねえ、目をよく見ると、クリクリっとしてかわいいの。
それに、真っ黒の羽が、ツヤツヤしてきれいでしょ」

素敵な感性だなと思った。
カラスと言えば、ゴミ置き場の袋をかみちぎって散らかす鳥というイメージ。私の中では、正直、いい印象はなかった。
そのカラスを、2番目に好きな動物だと言う。

大人のような先入観がなく、自分の感性で物事をとらえている。
そういう物の見方を、ずっと持ち続けて欲しい。

テレビ番組を見終わってリビングにやってきた2号に、
ソーダ作りの練習をしよう、と声をかけた。

シロップと炭酸を混ぜるのは簡単だけど、
課題は、「富士見デッキのサンセット」を表現するために、
色のグラデーションを作ること。

クリームソーダ職人の言葉を思い出す。
炭酸水の注ぎ方に2つのコツがあるという。

○シロップの上に、そーーっと静かに注ぐこと
○2回に分けて注ぐこと。1回目炭酸水を注いでから、
シロップと水の境目をぼかすように、やさしく混ぜる。
その上から、さらにそーっと炭酸水を加えることで、
美しい夕焼けのようなグラデーションができる。

炭酸職人の言葉を思い出しつつ、
そのとおりにやってみると……

できた!
本当にきれいなグラデーションができて、
けっこうこれは、感動した。

炭酸水ではなく、ジュース(オレンジジュースやリンゴジュース)を加えても、2層に色が分かれたカラフルなソーダができる。

 

【18日目】等々力公園ふるさとの森で「出張カフェ」


2019年8月6日(火)

今日は、Iちゃんと原画展の打ち合わせの日。
隣町まで、自転車で30分。
ペダルをこぎながら、アニマルカフェのことについて考えた。

昨日の日記で書いたように、
メニューについては、
家庭の料理とは違って「万人うけする味」を考えなくてはならない。

さらに、場所についても
コトニアガーデンで行うことになっていたのだけど、
イベントの会場設営の関係で、12日は使えなくなった。

というわけで。
メニューも場所も、
いったん計画をゼロに戻して考え直すことになった。

今回は、第一回目。
たくさん理想はあるけれど、すべてをクリアすることに
こだわっていては、計画倒れに終わってしまう。

一番優先するのは、アニマルカフェを開催すること。
もうひとつは、プラゴミをださないこと。
どうしても譲れない2点のみにゴールを絞った。

まずカフェのメニューについて。
ビネガーシロップでは、「すっぱいものが苦手」という
友人の子どもには、不評かも。

そこで、ビネガーシロップのほかに、
一般受けするかき氷を加えてはどうか。
本格的な営業だと、業務用のかき氷器がないとできないけれど、
アニマルカフェ第一回目のお客さんは、友人親子のみ。
少人数なのだから、家庭用で十分だ。

せっかくの機会なので、
何年も前から2号が欲しいと言っていた
「フワフワ氷が作れる電動かき氷器」を購入しよう。

インターネットで調べてみると、
出てくるわ、出てくるわ、ものすごい種類の製品がある。
一度に大量に作れるもの、コンパクトなもの、
削る粗さを調整できるもの、専用製氷機orバラ氷専用
流行の台湾風かき氷がつくれるもの。
かき氷だけではなく、冷製料理にも使えるもの。
値段も、2000円台から数万円までピンキリ。

はてどれを選べばいいものか……。うーーーん。

延々と大量の商品説明を眺め続けること1時間。
ふと「コードレス」という文字が目に入った。
ドーシシャという会社の商品で、価格は3000円程度。

なぬ? かき氷器にコードレスタイプがあるんだ。
単3電池4つで動く。
専用の製氷機で作った氷のみ、というかき氷器が多かったが、
これは、一般的な冷蔵庫で作れるバラ氷OK。

ということは、
場所を選ばず、どこでもかき氷ができるということ。
コンビニで氷を買えば、手ぶらで行って、その場で作れる。

ということは!
「出張カフェ」ができる。
いろんなイベントやワークショップに出かけるのはもちろん、
たとえば、等々力の森でカフェができる。
イベントのとき「おもてなし」として、
ソーダやかき氷をつくったら、喜ばれるだろうな。

第一回目アニマルカフェは、
等々力公園のふるさとの森にしよう。
森のベンチで、子どもたちを遊ばせながら
アニマルカフェ。
アニマルはいないけど……
いた!
いつも私が仕事をしているテーブルの隣に、
白い美しいネコをつれたイリーナさんがやってくる。
イリーナさんのお友達もペットをつれてやってくる。

2号の大好きなネコがいるカフェ。
すごい、バッチリだ。

出張カフェなら、
森だけではなく海でもできる。

海でシュノーケリングをたっぷり楽しんだあと、
砂浜で、海を眺めながらかき氷を食べる。
最高のカフェだ。

口コミ情報によると、氷を入れる容量が小さめらしいが、
コードレスという一点を優先して、ドーシシャのかき氷器に決めた。

 

【17日目】分かりやすいおいしさ


2019年8月5日(月)

今日も猛烈に暑い。溶けそうだ。
午前中に仕事の打ち合わせで、最近人気の和風カフェに入った。
何かひんやりしたものが欲しいねと、
甘党の男性編集者はイチゴのかき氷、
私は、生麩入り(!)抹茶あんみつを頼んだ。

しばらくして運ばれてきたイチゴのかき氷に、目が釘付けになった。
器の高さの5倍くらいはありそうな特大サイズ。
赤い蜜がたっぷりかかって、
頂上にアイスクリームがど~んと載っている。

「くずれやすいので、この器に移しながらたべてください」
と店員さんが取り分け用のボールを渡してくれた。
同じものを頼んだ他のテーブルでも
大迫力の見た目に「おぉーー」と声があがっている。

しかし、男性編集者は、半分も食べないうちに、
「もうこれいいや」とスプーンをおいた。

「あれ、おなかいっぱいになりました?」

「いや、あまりおいしくないんだ。
たぶん本物のイチゴの果実と果汁を使った体にやさしい
シロップを使っているんだろうね。

それは分かる。最近そういうの多いよね。
でも、ぜんぜん甘くない。
あの、子どもの頃に食べた
普通のいちごシロップをいっぱいかけてほしい。
ガツーンと甘いのが食べたい」

口をつけていない端っこのほうを味見させてもらった。
いちごの風味がひろがっておいしいのだけど、
確かに、甘さはかなりひかえめ。
よく耳にする「やさしい甘さ」であって、
ガツーンとした甘さではない。

さらに、編集者は言った。
そんな香料が体に悪いって言ったって
毎日食べるわけじゃないんだから。
体に影響があるとしたら、
毎日、大量にとり続けた場合でしょう。
カフェで非日常を楽しむときは、
やさしい甘さより、「分かりやすいおいしさ」を優先してほしい。

アニマルカフェで、「体にやさしい」シロップのことばかり
考えていたので
編集者の言葉が、ガツーンと胸に響いた。

「そ、そうですよね……。貴重なご意見ありがとうございます」
思わずそうつぶやいて、
編集者をキョトンとさせてしまった。

カフェは、非日常。
家庭のおやつとは、分けて考える。
「万人に合う分かりやすいおいしさ」
という視点が抜けていた。

アニマルカフェ本番まで、一週間を切ったところで、
振り出しに戻る。

まず「誰でもおいしいもの」でなければ
いくら体によくても、何度も食べたいとは思ってもらえないだろう。

大切なことに気づいた一日だった。

 

【16日目】夢見ヶ崎の夢見る原画展でカフェをOPEN


2019年8月4日(日)

アニマルカフェと併行して原画展の準備も進めている。
今日は、原画展のチラシをつくった。
アニマルカフェとまったく同じデザインに当てはめるだけ。
けっこう見栄えのいい仕上がりになって大満足だ。


原画展のことを考えながら、ふと思いついた。
絵本の原画展で、アニマルカフェをOPENすればいいのでは。

原画展は、区役所の企画課や動物園の園長さんとも
話ながら進めるのだから、
その打ち合わせのついでに
カフェの手続きも進められる。

よく考えてみると、
絵本の世界を表現したクリームソーダなのだから、
原画展にはぴったりマッチする。

さらに、原画展のテーマは
「夢をかなえる」

アニマルカフェを開く夢をかなえる。
大人も子どもも夢がかなう場所、夢見ヶ崎。

小さな石をひとつひとつ置いて、
最初は、ひとつひとつがバラバラ。
たくさん置いていくと、
あるとき、石がつながって線になる。やがて面になる。

原画展とアニマルカフェ、ふたつの石ころが
いまつながった。


【第一ステップ】
夏休みにお友達といっしょに「カフェOPEN」にチャレンジする
⇒コトニア交流室(⇒等々力公園ふるさとの森に変更)

【第二ステップ】
原画展で「公の場」にチャレンジする⇒夢見ヶ崎動物公園

【第三ステップ】
「有料」のカフェにチャレンジする⇒???

ひとつひとつ、小さなステップを積み重ねて
新しいことに挑戦していく。

【15日目】自分自身が熱望するものをつくる


2019年8月3日(土)

早朝から、等々力の森カフェでIちゃんと仕事の打ち合わせ。
3号は、その間森のなかで自由に遊ぶ。
最近は、公園に来ている子どもに積極的に声をかけて
いっしょに遊ぶようになった。

そのあと、なりゆきで隣町のIちゃんの家まで遊びにいく。
帰り道に通りかかった平和記念公園
これまたはじめて出会った親子といっしょに遊ぶことになり
その子がおすすめする「じゃぶじゃぶ池」に連れて行ってもらう。
服のまま池に飛び込んだので、パンツ一丁の3号を自転車のうしろに乗せて帰る。
夕方6時すぎにやっと帰宅。
長い長い一日だった。

お風呂で汗を流し、ほっと一息。
我が家では、土曜日の夜、親がワインで乾杯するとき、
子どもたちも好みのジュースで乾杯する。
2号と3号は、炭酸系ジュース。
1号は、ミルクオレと決まっている。

今までは、市販のジュースだったけれど、
ジュースを自分でつくれるようになったら
わざわざ買い物に行く必要がなく、
なにより体にいい材料を使える。

○色つきシロップはなるべく無添加のものを選ぶ。
○甘みをつけるガムシロップは手作りもしくは、アガペシロップ。
○炭酸水は、炭酸水メーカーでつくる。
○アイスは、卵、砂糖、生クリームを使わないココナッツアイス。
○ゼリーは、豆乳寒天。

ナリワイづくりの基本。
「自分自身が熱望するものをつくる」

カフェを開くのはあくまできっかけであって、
「自分が欲しいもの」をまずつくる。
いつもこの原点に戻る。

自分が欲しいものをつくって、
それを周囲の人にもおすそわけする。

先日の新聞記事によると、
いま、世界中でヴィーガンの人が増えているそうだ。
ココナッツアイスは、生クリームも卵も砂糖も使わないから、
アレルギーのお子さんやヴィーガンの方にも対応できる。
 
来年2020オリンピックパラリンピック
英国代表が、等々力公園にやってくる。

あずちゃんが、
そのときに、ふるさとの森でグランピングパーティーみたいなことをしたらいいね、と言っていた。
そこで、アニマルカフェを開くとしたら……?
ヴィーガン」対応のドリンクがあれば、
ヴィーガンが多いと言われるヨーロッパの人にも
重宝されるかもしれない。

なーんて、先のことだけど、夢がひろがった。

タラブックスの「ハンドメイド絵本」

 

「アートのような絵本」
あずの言葉を思い出して、一冊の本を手に取った。

『タラブックス~インドのちいさな出版社、まっすぐに本をつくる~』玄光社

 

 インドにある出版社、タラブックス。機械であっという間に製本できる今でも、美しいハンドメイドの絵本をつくっている。手漉きの紙にシルクスクリーンで印刷し、厚紙で表紙をつくり、糸でかがって綴じる。まさに「アートのような絵本」。

 

 こんなふうに、くじらの絵本も、ハンドメイドにしてはどうか。イギリスの石けん屋さんの店内に置くことをイメージしたとき、くじらの絵本のカタチがはっきり見えてきた。イギリス人のデザイナーは、風呂敷=日本の文化に心惹かれたという。

 

 それならば、「手漉きの和紙」を使った「和製本」はどうか。本社がイギリスだから、検討してもらうためには、「英訳」が必要だろう。ハンドメイドだから、大量にはつくれない。見本を一冊だけ飾って、「受注してから生産する」スタイル。タラブックスも同じで、注文してから一年待ち、ということもある。

 

新しい出版のスタイルをつくる

 大量に生産して余ったら廃棄、ではなく、作り手は、いいものを丁寧に、必要な分だけつくって、それを届けた人は、長く大切に使う。そんな新しい出版のスタイル。絵本の内容だけではなく、出版のカタチから提案したい

 

 タラブックスは十数人の小さな会社で、家族のように働いている。著名な作家やアーティストは避け、世の中にまだ知られていない非凡な才能を探す。難しいことをシンプルに、誠実に伝える本をつくる。すべてが、驚くほどまさ出版とよく似ている。ちなみに、タラブックスは、最初は国内ではなく、海外の出版社に受け入れられた。

 

タラブックスとの不思議な出会い

 私の手元にあるタラブックスの本との出会いが、これまた不思議。絵本と出会うきっかけをつくってくれた、会社社長Sさんのところに、数年前、タラブックスの本が届いた。
 Sさんは、出版社の人と面識もないのに、なぜ自分のところに届いたのか不思議に思ったけれど、この本を見たとき、ふと私の顔が浮かび、本棚にしまっておいたそうだ。それから2年もたち、今年に入ってから、私が彼女のオフィスに伺ったとき「そういえば……」といって、取り出してくださった。
 その本が、こうして新たな方向性を教えてくれたのだから、つくづく不思議なご縁を感じる。私を導いてくれる見える力と見えない力に感謝。
 

文章を書く、という原点に戻る②~「Own Media=インフラ」を育てる~


原画展をきっかけに、文章を書くという、自分の原点に戻ることをきめた。
文章を書く舞台はブログ。

小さい小さい自分の拠点となる場所。
ブログをOwn Media(自分のメディア)として育てる。

 

 

人気ブロガーのちきりんさんは、著書の中でこう述べている。
「Own Media(自分のメディア)はインフラ」
『「自分メディア」はこう作る!』(文藝春秋)より

 

--自分のサイトを育てることは、将来何か新しいことをやるためのインフラを整備し、維持しておくようなものです。ライターを目指すのでも収益化を目指すのでもなく、「ちきりんの日記」という場所の運営者として、その場所の価値をできるだけあげていくこと、それを目標として設定したことは、ちきりん活動の指針の大方を規定する、重要な決断だったと思います--

 

 3号が、保育園を卒園するまでは、地道にOwn Media=インフラを育てる。将来何か新しいことをやるためのインフラを整備し、維持しておく。それが、今できることだ。
 
 3年前にスランプにおちいって以来、まだまだ本調子ではない。だけど、今回、むりやりパネルの文章を書いたことで、言葉が降りてくる、かつての手応えを感じた。
 ブログをMediaに育てるためには、なるべく定期的に更新したほうがいい。毎日、小さくてもいいから、くるくる更新できるような、習慣をつくろう。
 
 出版社につとめていたとき、毎朝、出勤前に30分だけ原稿を書いていた。1号と2号が赤ちゃんのときも、朝30分だけ原稿を書いていた。忙しくても、その30分があるから、毎日前に進んでいる充実感と安心感があった。そのときのことを思い出して。

 

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以下、ちきりんの本の中から抜粋。

◎私の場合は、ライターになりたいわけでも、本業のプロモーションをしたいわけでもありませんでした。「何かおもしろいことができる、自分の場所を持ちたい」という考えのほうが大きかったのです。
◎価値観の似たタイプの読者が多数集まるようになれば、アクセス数が増えて広告料が入るなどというレベルを超えて、様々な新しい(そして楽しい)試みが可能になる。そう確信していました。
◎「書籍を出すのもブログへの集客の手段」と考えている理由も、ここから来ています。著作がある、単著があるということは、リアルなビジネスの世界で信用力を得るためには大変役に立ちます。けれども本は「コンテンツの塊」であって、「発信できる場所」ではありません。ほとんどの本は出版後1年もたてば、書店で探すのも難しくなります。そんな著作を何冊も持っていることより、毎日何万人も訪れてくれるサイトを持っているほうが、圧倒的に発信力は高いのです。