ゆめカフェができるまで           

今度はおぬしが夢を叶える番じゃ

夢見ヶ崎動物公園絵本プロジェクトvol.21           ~「テーマ曲」が決まる~

 イラストレーターKちゃんは、「原稿のボツ」を伝えるとき、「ボツ」とは言いません。ただ何も言わず、「これを見ておいて」と、宿題を出します。

 過去に出た宿題は、「スキマの国のポルタ」「猫の恩返し」「うさぎのさとうくん」etc.……。テレビ番組や映画、そして絵本は思い出せないほどたくさん。ボツの数だけ次々に宿題をこなしてきました。

 そしてこの前出た宿題は、「耳をすませば」(近藤喜文監督)。柊あおいの漫画を原作としたスタジオジブリ制作のアニメーション映画です。

 Kちゃんは、これを見せて、私に何を伝えたかったのだろうなあ、どう文章に生かせばいいんだろう??? どこをどうなおせばいいのやら、何も言わないんだから、まるで鬼編集長だよなあ、などとぼやきながら、ぼんやりとみていると……

 中盤で、ひとつのシーンに目が釘付けになりました。主人公の雫と聖司、そのおじいちゃんと音楽仲間が、「カントリーロード」という曲を演奏し、歌っているシーンでした。

 雫は音痴だからと言いながら、最初はギクシャク、でも最後はのびのびと心から楽しそうに歌って、歌い終わったあとは自然に拍手がわいて……。

 演奏がうまいへたなんて関係なく、音楽を通じて、その場にいる人の心が一体になる心地よさ。すごくいいな。途中から他の楽器が飛び入りして、即興でタンバリンや笛が加わったり、ハモったり。そういう自由な感じもすごくいい。

 たった3分くらいのシーンが、次の日になっても印象深く心に残っていました。「この歌を歌ってみたいなあ」。大昔に職場の忘年会でカラオケに行ったくらいで、歌が好きというわけでもないのに、なぜかそう思っていました。

 インターネットで英語の歌詞をプリントして、なにげなく和訳を眺めていたとき、「あっ……」。思わず声がもれました。タイトルや歌詞に何度も出てくる「Country Roads」故郷へ続く道……故郷……ふるさと……! これって絵本のテーマじゃないか。こんな偶然って。

 すぐにKちゃんにメールを打っていました。「Country Roadsを朗読コンサートのテーマソングにしたらどうかな」。夏休みで実家の輪島に帰省しているKちゃんからすぐに返信がきました。

 メールの内容は、テーマソングの話ではなく、ただひとこと。「〈千と千尋の神隠し〉も見てみて!」。また宿題か(T_T)。

 さて、気を取り直して。このテーマソングを朗読コンサートでどのように登場させればいいか。そう考えていると、またもや偶然、昨日の夜たまたまつけっぱなしになっていたテレビで、ヒントがふってきました。

 NHKの少女向けのテレビアニメ※で、朗読コンサートのシーン(なぜ少女アニメで!?絵本の朗読ってはやっているのか?)。小さな部屋に、二人の朗読者とオルガン。絵本「てぶくろをかいに」のクライマックス、こぎつねがとおりかかった家の前で、人間の声が聞こえました。

 なんてやさしい、なんて温かい声なんだろう――そこで「ねむれねむれ」の子守唄を歌います。たった3人の朗読ユニットで、演劇の舞台のような雰囲気でした。こんな感じでCountry Roadsを歌えたらいいな。イメージにぴったりでした。

 絵本も、朗読コンサートも、パズルのピースがひとつひとつ埋まるように、形が見えていく。作品という「結果」よりも、作っていく「過程」そのものがエキサイティング。せっかくの機会だ、ひとつひとつの過程をじっくり味わっていこう。

 

※「カードキャプターさくら」《第19話》さくらと秋穂の子守唄(NHKEテレ8月8日水曜日7時30分放送)