ゆめカフェができるまで           

今度はおぬしが夢を叶える番じゃ

【17日目】分かりやすいおいしさ


2019年8月5日(月)

今日も猛烈に暑い。溶けそうだ。
午前中に仕事の打ち合わせで、最近人気の和風カフェに入った。
何かひんやりしたものが欲しいねと、
甘党の男性編集者はイチゴのかき氷、
私は、生麩入り(!)抹茶あんみつを頼んだ。

しばらくして運ばれてきたイチゴのかき氷に、目が釘付けになった。
器の高さの5倍くらいはありそうな特大サイズ。
赤い蜜がたっぷりかかって、
頂上にアイスクリームがど~んと載っている。

「くずれやすいので、この器に移しながらたべてください」
と店員さんが取り分け用のボールを渡してくれた。
同じものを頼んだ他のテーブルでも
大迫力の見た目に「おぉーー」と声があがっている。

しかし、男性編集者は、半分も食べないうちに、
「もうこれいいや」とスプーンをおいた。

「あれ、おなかいっぱいになりました?」

「いや、あまりおいしくないんだ。
たぶん本物のイチゴの果実と果汁を使った体にやさしい
シロップを使っているんだろうね。

それは分かる。最近そういうの多いよね。
でも、ぜんぜん甘くない。
あの、子どもの頃に食べた
普通のいちごシロップをいっぱいかけてほしい。
ガツーンと甘いのが食べたい」

口をつけていない端っこのほうを味見させてもらった。
いちごの風味がひろがっておいしいのだけど、
確かに、甘さはかなりひかえめ。
よく耳にする「やさしい甘さ」であって、
ガツーンとした甘さではない。

さらに、編集者は言った。
そんな香料が体に悪いって言ったって
毎日食べるわけじゃないんだから。
体に影響があるとしたら、
毎日、大量にとり続けた場合でしょう。
カフェで非日常を楽しむときは、
やさしい甘さより、「分かりやすいおいしさ」を優先してほしい。

アニマルカフェで、「体にやさしい」シロップのことばかり
考えていたので
編集者の言葉が、ガツーンと胸に響いた。

「そ、そうですよね……。貴重なご意見ありがとうございます」
思わずそうつぶやいて、
編集者をキョトンとさせてしまった。

カフェは、非日常。
家庭のおやつとは、分けて考える。
「万人に合う分かりやすいおいしさ」
という視点が抜けていた。

アニマルカフェ本番まで、一週間を切ったところで、
振り出しに戻る。

まず「誰でもおいしいもの」でなければ
いくら体によくても、何度も食べたいとは思ってもらえないだろう。

大切なことに気づいた一日だった。