ゆめカフェができるまで           

今度はおぬしが夢を叶える番じゃ

タラブックスの「ハンドメイド絵本」

 

「アートのような絵本」
あずの言葉を思い出して、一冊の本を手に取った。

『タラブックス~インドのちいさな出版社、まっすぐに本をつくる~』玄光社

 

 インドにある出版社、タラブックス。機械であっという間に製本できる今でも、美しいハンドメイドの絵本をつくっている。手漉きの紙にシルクスクリーンで印刷し、厚紙で表紙をつくり、糸でかがって綴じる。まさに「アートのような絵本」。

 

 こんなふうに、くじらの絵本も、ハンドメイドにしてはどうか。イギリスの石けん屋さんの店内に置くことをイメージしたとき、くじらの絵本のカタチがはっきり見えてきた。イギリス人のデザイナーは、風呂敷=日本の文化に心惹かれたという。

 

 それならば、「手漉きの和紙」を使った「和製本」はどうか。本社がイギリスだから、検討してもらうためには、「英訳」が必要だろう。ハンドメイドだから、大量にはつくれない。見本を一冊だけ飾って、「受注してから生産する」スタイル。タラブックスも同じで、注文してから一年待ち、ということもある。

 

新しい出版のスタイルをつくる

 大量に生産して余ったら廃棄、ではなく、作り手は、いいものを丁寧に、必要な分だけつくって、それを届けた人は、長く大切に使う。そんな新しい出版のスタイル。絵本の内容だけではなく、出版のカタチから提案したい

 

 タラブックスは十数人の小さな会社で、家族のように働いている。著名な作家やアーティストは避け、世の中にまだ知られていない非凡な才能を探す。難しいことをシンプルに、誠実に伝える本をつくる。すべてが、驚くほどまさ出版とよく似ている。ちなみに、タラブックスは、最初は国内ではなく、海外の出版社に受け入れられた。

 

タラブックスとの不思議な出会い

 私の手元にあるタラブックスの本との出会いが、これまた不思議。絵本と出会うきっかけをつくってくれた、会社社長Sさんのところに、数年前、タラブックスの本が届いた。
 Sさんは、出版社の人と面識もないのに、なぜ自分のところに届いたのか不思議に思ったけれど、この本を見たとき、ふと私の顔が浮かび、本棚にしまっておいたそうだ。それから2年もたち、今年に入ってから、私が彼女のオフィスに伺ったとき「そういえば……」といって、取り出してくださった。
 その本が、こうして新たな方向性を教えてくれたのだから、つくづく不思議なご縁を感じる。私を導いてくれる見える力と見えない力に感謝。