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今度はおぬしが夢を叶える番じゃ

原画展3日目/この絵本で、何を伝えたいのか

2019年9月23日(月)
原画展3日目

「地域の歴史をテーマにした絵本をつくって、

この絵本を通じて一番伝えたいことは何ですか?」

 

 テレビ局で働いていたときの恩師Iさんが、原画展を見るために、遠方からかけつけてくれた。会場をさらっと見て、私にこうたずねた。「この絵本で、何を伝えたいの?」と。

 

 伝えたいこと……、と聞かれてもすぐには答えられない。
とっさに「地域のことを知ることで自分の住む街に愛着を深めてほしい……」というようなことを答えたが、なんとなくしっくりこない。なんだか上っ面の言葉という感じ。
 家に帰ってもずっと心にひっかかっていた。地域の歴史を描いて、わたしは何を伝えたいのか。

 そういえば、20年前、ニュースの原稿を書いたとき、いつも同じ質問をされた。覚えているのは、小さな過疎の村のお祭り。同じように、「何を伝えたいのか」と問われた。答えにつまった。

 

「○月△日、A村でこんなお祭りがあって、神輿が出て、○人の人が訪れてにぎわいました……って原稿に書きましたけど、ほかに何か足りませんか」。
すると、Iさんは、ぜんぜん違うという感じで首を振った。「それは単なる事実だ。その事実から、あなたが伝えたいのは何か」。

 

もう一度、取材してきた内容を振り返った。ここは過疎の村。かつては炭鉱でにぎわったが、今は若者たちがほとんど都会に出て行ってお年寄りばかりになった。祭りは、年に一度、親戚一同が村に集まる日。都会に出た若者たちも村に戻ってきて、神輿をかつぐ。村の人たちにとって、かつてのにぎわいを取り戻す、大切な1日なのだ。
「そう、それが伝えたいんだろ。だったら、そこを中心に書いて、強調しないと。今の原稿は、事実を順番に並べて説明しているだけだ」

 

 では、『ゆめみがさきのふしぎにゃトンネル』で伝えたいことは何か。原画展が終わってからも、この質問がずっと頭の中をぐるぐるまわっていた。

 

 古墳の時代、田んぼの時代、工業化の時代、公害から立ち直る時代、そして、高層マンションが立ち並ぶ現代へ……。それぞれの時代で、地域の人たちが一丸となって大きなことを成し遂げてきた。
 
バトンタッチを受けた私たちは、次は、どんな街をつくっていきたいのか。この街で、どんな夢をかなえたいのか。それをみんなで考えませんか?

 

 そうだ。過去を振り返って、へえ~そうなんだ、で終わらない。過去を振り返ることで、いま、この瞬間を生きている自分と家族と街のことを考えたい。Iさんが言いたかったことが、見えてきた。

 

「〈夢がかなう木〉を大切にしたほうがいいよ」


Iさんは、こんなアドバイスをくださった。

柱のところに、木が貼ってあったでしょ。花の付箋にみんなの夢を書いてもらうやつ。あれが全然目立ってなかった。あの木をもっとどーんと大きくして、一番目立つところに貼るんだよ。大きな壁とか窓を一面全部使うようなイメージ。そして、「夢がかなう街、夢見ヶ崎」とか、そんなタイトルを大きくどーんと目立つように掲示する。そして、「どんな街にしたいですか?」っていう夢を付箋に書いて貼ってもらう。
 
 たしかに、原画展の会場で、「夢をかなえる木」は、目立たない柱の陰にひっそりと展示していた。動物園の園長さんやGABUさんたちに書いてもらった、夢を語るアンケートも、アンケート用紙を貼っただけ。

 

 一番伝えたいことは、「一番大きいスペース」を使って、「一番目立つところ」に配置する。雑誌の誌面でも、原画展の会場でも、基本は同じなのだ。

 
「夢をかなえる木」「夢をかなえるフォトスペース」「夢をかなえるワークショップ~絵本作家になろう~」は、もっと目立つ看板をつくる。

 

夢をかなえるアンケートは、パネルにして引き延ばす