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今度はおぬしが夢を叶える番じゃ

『ゆめみがさきのふしぎにゃトンネル』誕生秘話vol.8~常識よりワクワクするほうを選ぶ、の巻~

『ゆめみがさきのふしぎにゃトンネル』誕生秘話vol.8

~常識よりワクワクするほうを選ぶ、の巻~

 

 絵本のストーリーのなかで、もっとも大きな見せ場は、縄文時代、このあたり一帯が海だったという場面。このシーンを「最初」にもってくるか、「最後」にもってくるか。意見がまっぷたつに分かれた。あずの描いた絵コンテでは、海のシーンが最後に登場する。しかし、友人の編集者は、口をそろえて「最初にもってきたほうがいい」とアドバイスをくれた。最初に印象的なシーンをばーんと出して読者を惹きつける、というのは企画づくりのセオリー。わたし自身も、はじめは後者の意見で、この点については、そうとう迷った。

熟考の末、最終的に出した結論は、あずの意見を採用することだった。物語には、「どちらが正解」という答えはない。そうであれば、作者であるあずが、ワクワクする展開を選んだほうが、物語が生き生きするのではないか、と考えたのだ。あずには、他の意見があることは伝えず、「このコンテのイメージどおり描いて」と伝えた。

そして完成後、あのときの選択は、正解だったと確信した。あずは、物語の最後、みごとなクライマックスシーンを描き上げた。富士見デッキの向こうには、夕日でキラキラと輝く広大な海が広がっている。加瀬山から見たサンセットのイメージに、ぴたりとはまるイメージを見つけるために、夕日の写真を何十枚も撮影したそうだ。縄文時代に生息していた海の生き物についても、図鑑で徹底的に調べるといったこだわりよう。こっそりお伝えすると、次作の絵本の主人公、くじらの親子も描かれている(ココでしっかり宣伝するところが、あずらしい)。

作品づくりには、たいていクライアントがいて、自分の思い通りにいかないことも多い。制約がある中でも、可能な限り作る人がワクワクする方向へもっていくと、そこに爆発的な「夢パワー」が生まれる。今回の経験から、強く実感したのだった。