【7日目】コンセプトを考える~富士見デッキのサンセット~
2019年7月26日(金)
「アニマルなんだからさ、動物型のクッキーつけたら?」
ソファーでクッキーをかじりながら、2号が言った。
いつも鋭い意見をくれる。
なるほど。
クリームソーダに気をとられて、
すっかり「アニマル」から離れていた。
次は、カフェのコンセプトを掘り下げる。
夢見ヶ崎の「アニマルカフェ」だから、
メニューをはじめ、カラトリーや看板、チラシなどのアイテムにも、動物公園を連想させる要素を取り入れたい。
ここで、うーーーん、とまた考え込んだ。
クリームソーダにどうやって、「アニマル」の要素を入れる?
カップをアニマル柄にする?
はたまたクリームソーダが無理なら、
2号が言ったように、アニマル型のクッキーをつける?
うーーーーん、いまいちピンとこない。
2号といっしょに、あーだこーだ言いながら
考えることまる一日。
夜布団に入って、寝入りばなに、
ふとイメージが浮かんだ。
夢見ヶ崎動物公園の展望台、
富士見デッキから眺めた夕日。
あずちゃんといっしょに視察に行ったとき、
その美しいあかね色のグラデーションに見入った。
あずちゃんは、夕焼けの写真を100枚くらい撮ってイメージを膨らませ、絵本『ゆめみがさきのふしぎにゃトンネル』の
クライマックスシーンを描きあげた。
この絵は周囲の人からも好評で、朗読を担当してくれたMさんが
「どの絵も素敵だけど、富士見デッキから夕日を眺めるブサの絵は、とくに圧巻だね」と言っていた。
そうだ。
富士見デッキから見た夕焼けをイメージした
クリームソーダをつくってはどうだろう。
先日のNHKの番組で、
クリームソーダ職人直伝のレシピを紹介していた。
そのクリームソーダの名前は
「夕日が沈む頃の空色」
真っ赤なざくろシロップで、夕日に彩られた空を表現している。
シロップと炭酸水で、赤のグラデーションをつくると、
本当にあのとき見た空みたいだ。
富士見デッキで見た、あの空の色と、イメージがぴたりと重なった。
ネーミングは何にしよう。
「富士見デッキのサンセット〈レッド〉」
☆クリームソーダのネーミングに、「色」を入れよう。
じつは、夢見ヶ崎の絵本にも、見開きごとにテーマとなる色がある。
これは制作する前に、色のきれいな絵本にしようと、あずちゃんと話し合い、企画のプレゼンのときにも強調した点だ。
ページを開くたびに、ブルー、イエロー、グリーン、ピンク、赤……鮮やかな色がパッと目に入る。
☆さらに、「場所」もネーミングに入れる。
絵本の名前は、完成直前まで『ふしぎにゃトンネル』だった。
朗読のMさんが、「タイトルに〈ゆめみがさきの〉ってつけたほうがいいわよ。うん、最初に入れた方がいいわね。この場所のトンネルだって分かったほういい」とアドバイスをくれて、
『ゆめみがさきのふしぎにゃトンネル』というタイトルになった。
同じクリームソーダでも、「富士見デッキの」と入れたほうが、「ここだけの「限定もの」という印象がプラスされる。
夢見ヶ崎動物公園をモチーフにした絵本。
夢見ヶ崎動物公園をモチーフにしたクリームソーダ。
これなら、アニマルカフェのコンセプトにぴったりだ。
夏休みだけではなく、9月の原画展のときも紹介できるかもしれない。
さっそく無添加のシロップで、
この色が出ないか調べてみた。
赤なら、青と違って無添加シロップはいろいろ市販されている。
ざくろより、いちごのほうが、子どもには向いているかも。
今は旬の季節ではないけれど、冷凍フルーツでシロップを手作りすることもできるかもしれない。
調べていると、抹茶の無添加シロップもある。
抹茶の深い緑は、夢見ヶ崎の森の色。
一年のうちで、もっとも木々の緑色が深く鮮やかになる初夏のころ。
そうだ。夢見ヶ崎の森をイメージしたクリームソーダもいいな。
ネーミングは、
「初夏の夢見森〈グリーン〉」
ぶどうの無添加シロップは……
そうだ。
絵本の表紙は、カイヅカイブキのトンネル。
朝焼けで紫色にほんのり染まった空が描かれている。
この色は、印刷をするときなかなか出なくて、
何度も何度も印刷所と話し合って、データを修正してもらったのだ。
「朝日が昇る頃のふしぎにゃトンネル〈パープル〉」
たとえば、秋の夢見森〈イエロー〉、春の夢見森〈ピンク〉、冬の夢見森〈ホワイト〉などいろいろなカラーのバリエーションがあってもいいな。
枕もとにおいてある手帳に
浮かんだアイデアをメモして、眠りについた。