『Crystal Blue ~message of whale~』
動物たちのふるさと、美しい海を守り伝えたい
『Crystal Blue ~message of whale~』
作/まさ 絵/あず【まさ出版】
2018年夏、神奈川県鎌倉市の由比ガ浜で、シロナガスクジラの赤ちゃんが打ち上げられ、胃の中からプラスチックごみが発見されました。
このニュースを知り、私たちの身近な問題であるプラごみについて、親子で考えるきっかけをつくりたいと、母子クジラの物語『Crystal Blue ~message of whale~』を制作しました。
(P1-2)
ここは ふかい ふかい うみの なか
あなたの そばにある うみの おはなし
いま ひとつの
あたらしい いのちが たんじょうしました。
(P3-4)
おかあさんクジラと あかちゃんクジラは
いつも いっしょ。
あまえんぼうの あかちゃんクジラは
おかあさんに ぴったり くっついて およいでいます。
「ぼうや ぼうや わたしの ぼうや
いとしい いとしい わたしの ぼうや」
「マーマ だあーいすき……」
(P5-6)
おかあさんクジラは うまれたばかりの
ちいさな あかちゃんクジラが
かわいくて しかたがありません
「ぼうや ぼうや わたしの ぼうや
この ひろい うみには
すてきな ものが たくさん あるのよ。
うつくしい せかいが どこまでも ひろがっているわ。
ママと いっしょに
いろんな ものを みにいきましょうね」
「マーマと いっしょ。うれしいなあ~」
(P7-8)
「マーマ あれは なあに?」
「うみに すむ わたしたちの なかまよ」
「ふうーん、 いーーっぱい いるんだね」
(P9-10)
あるひ、カメのおじさんが とおりかかりました。
「マーマ、カメのおじさん くるしそうだよ。
はなに へんな ものが くっついてる」
「ほんとねえ、
なんの ぼうかしら」
カメのおじさんは、
ヨロヨロと およいで いきました。
(P11-12)
「さあ さあ ぼうや
いっぱい おっぱいを のむのよ
いーっぱい のんで
げんきに おおきく そだってね」
「んぐ んぐ んぐ」
(P13-14)
あかちゃんクジラは、
まいにち いろんなことを おしえてもらいました。
「マーマ みて みて。
ぼく いきつぎが じょうずに
できるように なったよ」
「そうよ、そのちょうし。
じょうずに なったわね」
(P15-16)
「ぼうや ぼうや
こんどは ふかく ふかーく もぐるわよ」
「マーマ ぼくの ほうが すっごい じょうずだよ」
「ほんとねぇ。
ぼうやは ほんとに じょうずね」
(P17-18)
あるひのこと。
あかちゃんクジラが
じっとして うごこうとしません。
「ぼうや ぼうや どうしたの?
おなかは すかないの?
つかれちゃったの?」
「マーマ…… ぼく…… なんだか へんなの……」
「ぼうや ぼうや わたしの かわいい ぼうや
どうしたの?
へんじを してちょうだい……!」
(P19-20)
「マーマー…… おなか いたいよ……」
「ぼうや ぼうや どうしたの?
だれか!
だれか おねがいします……
ぼうやを たすけて……!!」
(P21-22)
「マ……マ…… だ……い……す……き……」
「だめよ! ぼうや だめよ!
ママから はなれないで……
おねがい ぼうや!!」
(P23-24)
「ぼうや……ぼうや……
わたしの いとしい ぼうや……
ママのところに もどっておいで……」
(タイトル)
EPILOGUE
(小見出し)
「絵本でひろがる〈プラごみゼロ〉の輪」
(ネーム)
今、世界中で大きな社会問題となっているプラスチックごみによる海の汚染。とくに5ミリメートル以下の「マイクロプラスチック」による汚染は、全国の河川にも広がっていることが分かっています。
昨年夏、神奈川県鎌倉市由比ガ浜で実際にあったニュースが、この物語のモチーフとなっています。シロナガスクジラの赤ちゃんが海岸に打ち上げられた映像を見たとき、わたしは忘れられない悲しい出来事を思い出しました。
数年前の春、私にとって大切な人の、大切な息子が亡くなりました。まだ生まれて数ヶ月の赤ちゃん。突然の別れに嘆き悲しむ彼女の背中を、ただただ必死にさすり続けることしかできませんでした。
赤ちゃんクジラがクレーンで運ばれる映像に、大きな衝撃を受けるとともに、真っ先に思い浮かんだのが、母クジラのことでした。あの日の彼女の姿と重なったのです。
テレビの映像にはうつっていないけれど、母クジラは、きっとどこかからこの様子を見守っているでしょう。どれほど悲しい、苦しい思いをしているだろうか……。
このニュースをきっかけに、母子クジラの物語をつくることにしました。クジラからのメッセージを受け取り、伝えたいと思ったのです。
世界中の海には、人間の出したプラスチックごみによって苦しんでいる生き物がたくさんいます。マイクロプラスチックが、魚の体内に蓄積され、それを食べた人間の健康に影響を与える可能性もあると、専門家は指摘しています。
絵本のタイトル『Crystal Blue』は、透き通った美しい海を子どもたちに残したいという思いをこめました。
私たちの身近な海、世界中の海に、プラスチックごみが亡くなる日が、1日も早くおとずれますように。 2019年7月8日
(スタッフクレジット)
『Crystal Blue ~message of whale~』
作/まさ 絵/あず
WEBデザイン/石井秀幸
発行/まさ出版