ゆめカフェができるまで           

今度はおぬしが夢を叶える番じゃ

「ピッケのつくるえほん」企画がスタートしたきっかけ

 

2019年2月のある日。
中学一年生の子2号にくじらの母子の絵本『Crystal Blue』を「スクラッチジュニア」でデジタル絵本にしてもらった。
絵本の下絵を見せ、
指示は、「この絵本をスクラッチでつくってみて」のみ。
「できばえを見て、それに応じてギャラを支払うよ」と伝えた。

ちょうどコンビニで新発売お菓子を見かけて、
どうしても買いたかった2号は、がぜん張り切った。
さっそくタブレットを取り出し、
クラッチのホームページを検索して
自分でいろんなボタンを押しながら、使い方を調べている。

すごいと思うのは、私だったらまず
マニュアル本を買うとか、はじめての分野なら教室に行くとか、
何か準備をしてからと思うのだが、
子供は、いきなり思った瞬間からスタートしてしまう。

「え、使い方知ってるの?」というと、
「ううん、わかんないよ。いろいろやってみて試行錯誤だよ」
やっているうちに自然に覚えるものだし、
わからないところは、グーグル先生に聞けばいいという。
そういえば、スマホポメラも、
2号に与えると、マニュアルも読まず
あっという間に、いろんな機能を使いこなしていた。

用事で通りかかるふりをしつつ
チラチラのぞきこんでいると、
画面にはもう海の背景ができあがり、
キャラクターのクジラが登場している。

そうこうしているうちに、
クジラが動いて、海の中を泳ぎはじめた。
「ほほう!」(←私の心の声)

途中で2号が「うーん」と考えているので
「どうしたの?」と声をかけると、
「このページに出てくるクラゲがないのよね、
代わりにほかの生き物に置き換えていい?」
こうして、絵本の主旨になるべく合いそうな
キャラクターを選びながらつくっていく。

さらに、今度は
物語の文章を声を出して読み始めた。
何をしているのかな?と思ったら
1見開きごとに、音声を録音している。
文字を入力するかわりに
声でナレーションを入れているのだ。
「ほほう!」(心の声)

こんなふうに、自分なりに工夫して絵本を全ページ完成させ、
私のところへやってきて、得意げにプレゼンした。
もちろん、商品にするにはまだまだのレベルだけど、
はじめてスクラッチを触ったとは思えないほどのできばえ。

いつものお手伝い料に〈技術料〉をプラスして、
さらに期待以上の成果を出したから
出来高ボーナス〉をつけて、ギャランティーの額を提示した。

2号は、大喜び。
さっそく自分で得た報酬をにぎりしめ、コンビニに走って行った。

2号を観察しながら、
目からウロコが落ちた。
石戸先生がおっしゃったとおりだ。
子供は、プログラミングに特別な意識はない。
ハサミやのりと同じように、
プログラミングを物作りの道具のひとつとして
ごく自然に取り入れている。

道具を与えて、興味をもつきっかけさえ作れば、
あとは、自分で使い方を学んでいく。
これは、私にとって大きな発見だった。

親がすべき重要なポイントは、
「興味をもつきっかけ作り」だ。

私のようなパソコン音痴の親でも、
子供が興味をもつきっかけを作れないだろうか。
この出来事をきっかけに、私の中で大きなテーマになった。

そして、突然出会いはやってきた。
教員免許の更新のために受けていた講座で、
幼児向けデジタル絵本のプログラミングアプリ
「ピッケのつくるえほん」を知ったのだ。

コンセプトは、「子供が絵本作家になる」。
これだ!!!

プログラミングというと、ゲームもつくれるし、音楽もつくれるし、
もうありとあらゆるものを作ることができるんだけど、
「プログラミングで〈絵本〉をつくる」とピンポイントに絞っている
ところがシンプルでわかりやすい。

しかも、幼児に対象をしぼったアプリなので、ハードルが低い。
3歳からできるというのだから驚く。
ハサミやのりといった道具のひとつとして
幼児教育でプログラミングを取り入れたら、
興味がわくきっかけを作ることができるのではないだろうか。

「お勉強の科目」のひとつとしてプログラミングに出会うのと、
ワクワクする「ファンタジーを紡ぐ道具」として出会うのでは、
興味の大きさは、どれほど違いがあることだろう。

さらに、考えた。
私を含め、周囲でも「ピッケのつくるえほん」について
知っている人はいなかった。
近所でワークショップがあったという話も聞かない。
我が家の子が受けるにはどうしたらいいのだろう。

そこでひらめいた。
近所にないなら、自分でつくっちゃおう。
さっそくワークショップの企画書を書いてみた。
アプリ「ピッケのつくるえほん」を使って絵本をつくってみよう。

さらに、今かかわっている絵本企画と連動させると、
『みんなで夢見ヶ崎動物公園の絵本をつくろう』

これなら、プログラミングに触れるだけではなく、
絵本を広く知ってもらうこともできて一石二鳥だ。

引き続き調べていて、分かったことがある。
「ピッケのつくるえほん」のすばらしいところは
幼稚園や保育園だけではなく、特別支援学校や特別支援学級でも
教育の一環として取り入れられているところだ。

健常者と障害児が、いっしょに物語づくりに関わる
ワークショップを開けば、
「かわさきパラムーブメント」の主旨にもぴったりだ。

この企画はいろんな人に話していこう。
どこかでつながるはず。
目標がいっこ生まれた。