ゆめカフェができるまで           

今度はおぬしが夢を叶える番じゃ

夢見ヶ崎動物公園絵本プロジェクトvol.25              ~最大の危機、来る~

 2018年9月3日(月)

 イラストレーターKちゃんが、メールで1枚の絵を送ってくれました。主人公の猫「ブサ」が登場するシーン。色とりどりの花の中央にちょこんと座るブサ。トビラのページにふさわしい、インパクトのある出来栄えでした。

 最初の1枚を描くまで、3か月くらい時間がかかりましたが、ここ2週間というもの、Kちゃんは乗りに乗って、怒涛のように描きまくっています。

 フルタイムの仕事が終わったあと、家族6人分の夕食を作って、片付けをして洗濯をして、画用紙を広げるのは、たいてい子供たちが寝静まった夜中。ほとんど寝てないのでしょう。朝、保育園ですれ違うと、目が充血して顔も少しむくんでいるようです。

 帰り道でいっしょになったとき、「仕事もあるんだし、あんまり無理しないでね」と声をかけました。

 「描き始めたら、止まらなくなっちゃってさ。大丈夫、体力だけは自慢なんだから。そうそう……、今朝、D(小4次男)があの絵を見て、わあ、きれいって言ったの。子供が第一印象でそう感じるんだから、間違ってないって思ったよ。あとね……E(中2長男)が、お母さんがんばってねって」

 「え、あのクールなEくんが!?」

 「うん、あの子、ふだんはそんなこというタイプじゃないからさ……」。もうそこで、二人とも目頭が熱くなってしまいました。

 

 ちょうど一年前の夏のこと。学生のころから絵本作家になるのが夢だったと聞いて、何か1冊描いてみたら? とKちゃんに提案しました。子供の笑えるエピソードとか、姑同居話とか(まさに「渡る世間は鬼ばかり」を地で行く毎日)。

 たくさんアイデアは出るものの、なかなかカタチになりません。作品を創り上げるには莫大エネルギーがいるから、「締め切り」があったほうがいいんだろうな。そこで、絵本コンクールについて調べたりしましたが、なにかそっちじゃない気がする……。と考えていたとき、夢見ヶ崎動物公園絵本プロジェクトにたどり着いたのです。

 具体的な目標ができてからというもの、Kちゃんは明らかに変わりました。もともと元気なのだけど、さらに、体中からエネルギーが満ち溢れている感じというか。何より「目力」が違います。絵本のことを話すとき、新しいおもちゃを見つけた子供のように、目がキラッキラ。それに、なんだか若返ったみたい。

 いつだったか、「Kちゃんって、いつも元気だよねー」と言うと、「Yちゃんが、夢をくれたからだよ」と。

 朝すれ違いざまの会話でしたが、確かに、そう聞こえました。うれしかったーー。夢を見つけることで、人ってこんなに変わるものなんだ。Kちゃんの大変身を目の当たりにして、あらためて実感していました。

 

 じつはこの日。Kちゃんに会う前、絵本企画始まって以来、最大の危機が訪れていました。何があったかは言えませんが、もうこのプロジェクトを降りようかと頭をよぎるくらい、私にとっては衝撃的な出来事でした。

 でも、Kちゃんの話を聞いて、そんな思いもどこかに吹っ飛びました。今はとにかく、目の前の仕事と、絵本を完成させることに、全エネルギーと時間を集中させよう。

 あ、そうそう。今日もまた、Kちゃんから難解な宿題が出たんだった。

 「ブサを美輪明宏だと思って、文章を見直してもらえる?」

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《ちょっと裏話》

 「最大の危機」のように思えたこの一件。後日、先輩数人に意見を伺うと、皆一様に「なんだそんなこと」という反応。夫いわく、「そんなこと、会社勤めしてたら、はいて捨てるほど聞く話だよ。まあここは穏便に流したら」。"はいて捨てるほど"……ですか。確かに、これからもいろんなことが起こると思うけど、小さなことにいちいち気持ちが揺れていたら、時間がもったいないもんね。前だけ見て進むのみ。

「まあそれじゃ気がすまないだろうから、裏ブログでも書いたら(ニンマリ)」〈夫〉