ゆめカフェができるまで           

今度はおぬしが夢を叶える番じゃ

夢見ヶ崎動物公園絵本プロジェクトvol.17     ~見えてきたトンネルの先の「光」~

 元キャスターMさんから届いたメールは、恒例のSK会(←テレビ局時代の同窓会)のお誘い。最後に、このようなメッセージがありました。

「絵本のお話会、素晴らしい企画ですね。逆にいまや立派なド素人の私で適任なのか不安が募ります。Sさん(SK会の現役アナウンサー)にコーチをお願いしようかしら」。仕事を離れて15年以上のブランクがあるMさんにとって、久しぶりの舞台。不安になるのは当然のことでしょう。

 

 私にも同じような経験があります。長女を出産後、しばらく仕事を控えていました。数年ぶりに復帰した初仕事は、ある有名タレントさんの取材。忘れもしない、あれは神楽坂のスタジオでした。予定より3時間も早く現場に到着した私は、緊張のあまり、神楽坂の坂道を延々と上ったり下ったり。はぁはぁぜぃぜぃ、汗だくになってスタジオ入りしたのを覚えています。

 Mさんに直接会って気持ちを伝えたかったのですが、本業の雑誌ライターの仕事が立て込み、SK会には出席できそうになかったので、メールを書くことにしました。

――またまたご謙遜を。ド素人なんて、とんでもない! でも、不安が募る気持ち、すごくよくわかります。私も久しぶりに仕事に復帰した日、ものすごく不安でした。取材先から逃げて帰ろうかと思うくらいでしたが、えーい大失敗でもいいと腹をくくって、当たってくだけて、今は本当に良かったと思っています。

 私はどんな結果になろうと、今回、Mさんにお願いしたいです。特別な練習をしなくても、今のMさんのままを出してください。子供たちに読み聞かせをしてきた、その経験が貴重です。

 今回はアットホームな市民祭りで、そんなに緊張する会場ではないのですが、大勢の前で披露するのは久しぶりだと思います。途中でストップしても、まったくかまいません。私を含め、他のスタッフもピンチヒッターとして控えて、万全のバックアップ体制で臨みますのでご安心ください。ではでは、またご連絡しますね(^^ ――

 

 メールを送信した後、はたと気がつきました。Mさんに向けて書いたものでしたが、じつはそのまま、自分へのメッセージでもあることに。詩人のような名文は書けないかもしれないけど、ありのままの自分の言葉で書けばいい。自分なりに最善を尽くして、あとは、周囲のスタッフの力を借りよう。

 絵本マニアKちゃん、社長Oちゃん、現役ママのはたらくらすスタッフ、幸いにも、周囲には正直に(←正直すぎる)意見を言ってくれる人がたくさんいます。Mさんには音読してもらって、リズム感のある音を取り入れよう。編集者Iちゃんが赤字を入れると、「何かがたりない……」という文章が、魔法の調味料を振りかけたようにぴりりと引き締まります。

 そして、私の傍らで絵本を一心不乱に眺めている3歳の娘。どんなマニュアル本より、彼女こそ一番の先生です。娘が、「ねえもう一回読んで」と言ってくれたら、それが私にとって最高の“名作”。そう思い至った瞬間、ストン、と肩から力が抜けるのを感じました。